ここではパーム油の問題点を文章にしてまとめています。

パーム油の環境的悪影響

環境的悪影響の見出し

森林減少

インドネシアとマレーシア、パプアニューギニアでは、2017〜2019年までにアブラヤシ農園のために毎年約8万6千ヘクタールの森林が失われました。これまでも木材生産のために熱帯林は伐採されてきましたが、天然林として残り、回復する部分もありました。しかしアブラヤシ農園に変えられると森林には戻りません。

森林減少

生物多様性の喪失

森林減少は、絶滅危惧種を含む生物たちの生息地を奪っています。ボルネオ島のゾウの生息数は1500〜2000頭ほどで、オランウータンは生息地の80%がすでに失われました。スマトラ島でも、ゾウは数千頭以下、オランウータンは15000頭ほど、トラは400頭以下にまで減少しています。陸上の生物種の半数を有する最も豊かな熱帯林の生物多様性は、アブラヤシ農園により失われようとしています。

インドネシアのスマトラ島北部には、ルーセル・エコシステムというゾウ、サイ、オランウータン、トラが共存する地球上で唯一の場所がありますが、アブラヤシ農園をはじめとする開発により危機に直面しています。

生物多様性の喪失

気候変動への脅威

パーム油(CPO)生産 (1トン あたり)の温室効果ガス排出量は、石炭の2.4トンより多く、約3.9~30トン(CO2換算)と推計されています。熱帯林の下に眠る泥炭層には、世界の化石燃料の消費量100年分の炭素が蓄積され、熱帯泥炭地は「地球の火薬庫」と呼ばれています。泥炭地におけるアブラヤシ農園開発は、気候変動を急速に進める重大な脅威と考えられています。

気候変動への脅威

パーム油の社会的悪影響

社会的悪影響

インドネシア北スマトラ州にて、アブラヤシ農園企業に抗議する労働者たち(JATAN撮影)

地域住民との土地紛争

昔から地域住民が利用してきた土地への権利を無視して、企業にアブラヤシ農園開発の許可が与えられ、土地を奪われた人々との土地紛争が頻発しています。インドネシアでは500件以上の地域住民との紛争があり、マレーシア・サラワク州では100件以上のアブラヤシ農園関連の裁判が起きています。

地域住民との土地紛争

インドネシア中央カリマンタン州にて、アブラヤシ農園開発に反対する住民(SAVE KINIPANより)

労働者や子どもの権利侵害

大規模なアブラヤシ農園は、移住労働者や日雇い労働者といった安価な労働力に支えられています。最低賃金を無視した歩合制賃金、厳しい達成ノルマの設定、農薬散布による健康被害を含め労働者の権利が侵害されており、そうした状況が、児童労働、債務労働を引き起こす背景にあります。パーム油は、米国政府労働省により、強制労働や児童労働への関与が認められる産品に指定されています。

労働者や子どもの人権侵害

農薬を散布する女性労働者(JATAN撮影)

汚職や違法な操業

大規模な開発の背景には、地域住民の土地権を軽視し、企業に土地分配を行うことで、政府高官や政治家が私財を蓄えている構造があります。土地開発権の認可が汚職の温床となり、違法な操業も起きています。

汚職や違法な操業

タイブ・マハムド 元サラワク州首席大臣が何十億ドルもの金を32年間にわたり、個人的に貯め込んでいたという図。その間にサラワクの原生林はわずか5%にまで減少し、この男とその取り巻きの私腹を肥やした。

森林火災と煙害

アブラヤシ農園をはじめとした大規模なプランテーション開発にともない、熱帯泥炭地の乾燥が進むことで近年インドネシアでは森林火災が多発しています。2015年には、例年に比べ深刻な被害がもたらされました。世界銀行によれば、2015年にインドネシアで起きた森林火災と煙害による経済的損失は、2004年にアチェ州で起きた壊滅的な津波による被害の二倍にあたる221兆円に及び、また261万ヘクタール(東京都の12倍)の森林が消失したと見積もられています。

2015年以降、政府により泥炭湿地規制が強化されたり、新規アブラヤシ農園開発を一時凍結する政策(2021年に終了)がとられました。

煙害

インドネシア中央カリマンタン州にて、国立公園での火災の様子(ウータン・森と生活を考える会)