ラオス 2011年度調査

調査事例:ラオス・ホアイフア(Huayhua)村

村の概要と土地利用の状況

この村には78世帯・366人(うち170人が女性)が暮らしています。主な生計手段は、稲作とゴム植林で、米の生産だけでは十分な食料を得ることができないため、換金作物であるゴムを植えたり、隣国のタイや首都ビエンチャンへ出稼ぎに行ったりすることで生計を立てています。稲作だけで十分な生計を立てているのは全78世帯のうち5、6世帯のみで、約40世帯がゴム農園を持っています。

企業による開発とLFA

ラオスではこれまで持続的な焼畑農業で食糧生産を続けてきた地域が多かったのですが、近年人口の増加が進むなか、焼畑を行うための農地の拡大が森林破壊につながっているとの認識を政府が持つようになり、1980年代後半から焼畑を抑制するために土地・森林区分事業(Land Forest Allocation:LFA) が始まりました。ホアイフア村でも1995年にLFAが行われ、土地利用区分がなされるようになりました。その後、2005年に日本企業の王子製紙 が村の周辺地域のコンセッションを取得し、翌2006年から植林を開始しました。その際、保護区に制定されていた森林が伐採されたとの情報も聞かれました。

2007年に二度目のLFAが行われ、土地の境界を明確にするための測量や地図の作成といった作業が同社主体で行われました。また、LFAにかかる900ドルの費用も同社が用意したそうです。これは1995年に行われたLFAで保護林として区分された森林に、同社が植林を行っていたため、これを合法化するのが目的だったと推測されます。同社の持つ植林地の合計面積は現在262ヘクタールほどです。また、(ラオスの現地企業である?)タイフア社も2005年から200ヘクタールほどのゴム農園を経営しています。

企業による補償も雇用も限定的

王子製紙はホアイフア村への補償として、2007年に井戸を3ヵ所つくり、さらに2009年から2010年にかけて、村の全世帯へ送電設備を整えたそうです。最近は土地の価格が上昇しており、ゴム農園のための土地もヘクタールあたり2万~3万バーツほどだそうです。同社が2009年から2010年にかけて支援した全世帯への送電設備の整備は1億キープ(100キープ=1.29円<2013年12月現在>)かかったというが、同社が植林を行っている土地の地価を考えると10億キープほどになるようです。3ヵ所の井戸についても、住宅が密集している2つの集落のうち、10世帯のみが暮らしている方に二つあり、残り約50世帯が暮らしている方には一つしかなく、しかも居住区から離れた場所にあるため、不便を強いられているそうです。

雇用面については、同社の植林地では2006年と2009年に植林する際に仕事があった以外は、加工工場が未完成で収穫も行われていないため、仕事はないようです。仕事内容としては、苗の運搬、下草刈り、肥料や農薬の散布などで、1日あたり4万キープと賃金が低かったため(村の土地にゴム植林を行っているタイフア社の類似作業の日当は5万キープ)、働く者は少なかったようです。

土地利用の変化

写真は2007年に王子製紙の協力によって行われたLFAの土地利用区分を示したものです。色分けされた区分は、それぞれ以下を示しています。

【白】二次林
【青】企業による産業植林
【茶】企業によるゴム植林
【緑】保全林
【水色】保護林
【薄茶?色】予備の森林、ゴム農園

figure01

ラオスは国連の基準に照らせば最貧国に区分される国ですが、国民の約8割が農業を営む農業大国であるため、飢餓の心配はこれまでほとんどありませんでした。しかし、市場経済の発展に伴って、これまで自給自足の生活を持続的に送ってきた人びとの生活様式が変わりつつあります。フアイフア村でも、主食である米を生産するための水田を、換金作物であるゴムを生産するための農園へ転換していった結果、現在では米については自家生産量よりも購入しなければならない量のほうが多いとのことでした。

figure02
住民によるゴム農園の様子

LFAの制度についても、本来は境界線を明確にして土地利用を区分することで森林や土地の利用を巡る利害関係を調整するのが目的のはずですが、残念ながら、権力を持つものが自分に都合の良く活動を行うための手段として使われているのが現状のようです。

調査時期:2012/02〜03
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