危ない油 パーム油のリスクを知っていますか?

アブラヤシ農園に転換された森林跡地に立ち、そこに残された 毒性の強い除草剤パラコートの空容器を手にして嘆く地域住民。

 パーム油を生産するためのアブラヤシ農園の開発によって、熱帯林が失われ、野生動物たちが生息地を失っていることはご存じかもしれません。

しかし、問題はそれだけではありません。パーム油を利用することで、様々な重大な問題に関与してしまうリスクがあるのです。「危ない油」への対処には、責任ある調達を目指した取組が必要です。

プランテーション・ウォッチ

パーム油の調達リスク:環境的悪影響

森林減少

インドネシアとマレーシアではアブラヤシ農園が急速に拡大し、過去20年間に約360万ヘクタール(九州程の面積)の森林が、アブラヤシ農園に変わりました。これまでも木材生産のために熱帯林は伐採されてきましたが、天然林として残り、回復する部分もありました。しかしアブラヤシ農園に変えられると森林には戻りません。

生物多様性の喪失

森林減少は、絶滅危惧種を含む生物たちの生息地を奪っています。ボルネオ島のゾウの生息数は1500頭以下で、オランウータンは生息地の80%がすでに失われました。スマトラ島でも、ゾウは数千頭以下、オランウータンは6600頭以下、トラは500頭程度にまで減少しています。陸上の生物種の半数を有する最も豊かな熱帯林の生物多様性は、アブラヤシ農園により失われようとしています。

気候変動への脅威

パーム油(CPO)生産 (1トン あたり)の温室効果ガス排出量は、石炭の2.4トンより多く、約3.9~30トン(CO2換算)と推計されています。熱帯林の下に眠る泥炭層には、世界の化石燃料の消費量100年分の炭素が蓄積され、熱帯泥炭地は「地球の火薬庫」と呼ばれています。泥炭地におけるアブラヤシ農園開発は、気候変動を急速に進める重大な脅威と考えられています。

パーム油の調達リスク:社会的悪影響

地域住民との土地紛争

昔から地域住民が利用してきた土地への権利を無視して、企業にアブラヤシ農園開発の許可が与えられ、土地を奪われた人々との土地紛争が頻発しています。インドネシアでは4000件以上の地域住民との紛争があり、マレーシア・サラワク州では100件以上のアブラヤシ農園関連の裁判が起きています。

労働者や子どもの権利侵害

大規模なアブラヤシ農園は、移住労働者や日雇い労働者といった安価な労働力に支えられています。最低賃金を無視した歩合制賃金、厳しい達成ノルマの設定、農薬散布による健康被害を含め労働者の権利が侵害されており、そうした状況が、児童労働、債務労働を引き起こす背景にあります。パーム油は、米国政府労働省により、強制労働や児童労働への関与が認められる産品に指定されています。

大規模な開発の背景には、地域住民の土地権を軽視し、企業に土地分配を行うことで、政府高官や政治家が私財を蓄えている構造があります。土地開発権の認可が汚職の温床となり、違法な操業も起きています。

タイブ・マハムド 元サラワク州首席大臣が何十億ドルもの金を32年間にわたり、個人的に貯め込んでいたという図。その間にサラワクの原生林はわずか5%にまで減少し、この男とその取り巻きの私腹を肥やした。

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