2011年度インドネシア現地調査 RSPO認証制度には紛争防止・解決は期待できず

組合がまとめているすべての村の、収穫量やかかった費用、収益などについて、月ごとにまとめた資料

2011年現在、インドネシアには約600万ヘクタールのアブラヤシ農園が広がっていますが、その約半分にあたる270万ヘクタールがスマトラ島のリアウ州に集中しています。世界的な需要増を背景に、住民が管理主体となる小規模農園が特に拡大しており、「アブラヤシ農園のあるところに問題あり」と現地NGOが揶揄するほど、さまざまな問題も同時に広がっています。

インドネシアでは1967年の森林法により、基本的に森林は国の所有物とされています。このため、住民が昔から自分の土地として利用している森林も、法律上の所有者は国となり、そうした森林が接収される問題が、開発の広まるリアウ州の各地で問題となってきました。また、アブラヤシ農園開発への住民参加を目的の一つとしたKKPA等のプログラムも、企業側と住民側との間で死傷者まで出るほどの衝突が起こっていることを考えると、情報・資金面で優位な立場にある企業との軋轢を防止・解決するといった機能までは期待できません。

アブラヤシによって経済的に潤っている住民も確かに存在しており、アブラヤシ生産がもたらす功罪の見方はその視座によって異なりますが、各事例調査からは、世界の趨勢に翻弄される生産国の姿が垣間見えます。インドネシアのアブラヤシ農園で起きているさまざまな問題を生産国側だけの問題として捉えるのではなく、消費国側からもアプローチし責任を考えていく必要があります。そうした責任を果たすためのしくみであるRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証も一定の機能を果たしていますが、今回の各事例では認証取得企業との間でいまだ問題の解決が見えない状況でした。RSPO認証だけで問題が解消されると考えるのは時期尚早のようです。

一方、労働力の継続的確保も今後問題となる可能性があります。現在、リアウ州の大規模農園の労働者は、地元民ではなく、ジャワ島やニアス島(北スマトラ)の人びとが大半を占めています。リアウに比べ地元の物価が低いため、リアウ州では低賃金の労働でも、彼らにとっては十分な収入となっているからですが、経済発展が著しい近年のインドネシアにおいて、このような安い労働者の供給がいつまで続くのかは不透明です。また、将来的なアブラヤシ価格の安定性を含めた、不確実な要素・新たな問題についても注視していかなければなりません。

調査時期:2011/09