団体設立の経緯

オランウータン保護センター(Centre for Orangutan Protection/COP)は、インドネシアのボルネオ島(カリマンタン)を拠点にオランウータンの保護活動に取り組む団体です。インドネシアではこれまでにもオランウータンの保護に向けた努力が行われてきましたが、次々と熱帯林が失われていく中で、保護したオランウータンを野生に戻すための場所がないというジレンマを抱えています。

COP代表のハルディ氏は、「蛇口から水が漏れていると知りながら、濡れた床をモップで拭き続けている状況」であると語ります。オランウータンを守るためには新たなアクションが必要だとして、2007年にハルディを含む複数のメンバーによりCOPは設立されました。COPは数あるオランウータン保護団体の中でも、インドネシア人により立ち上げられた唯一の団体です。

オランウータン保護活動

森林保護

オランウータンの生息地である森林を保護することは、オランウータンを守るためにもっとも重要です。COPでは、オランウータンやその生息地となる森林に影響を与える企業活動の調査・モニタリングを実施しています。

最新の研究によれば、過去20年間のうちにオランウータンの生息地となる森林の80%が失われました。現在、野生のオランウータンの生息数はボルネオ島では54,000頭ほど、スマトラ島では6,600頭ほどと言われており危機的な状況に追い込まれています。

絶滅危惧種であるオランウータンは、インドネシアの法律により保護の対象とされています。生態系保全に関する1990年第5号法律では、オランウータンを含む野生生物の保護について規定されており、第21条第二項の1~4では「保護されている野生生物を捕まえたり、殺したり、取引したりしてはならない」、5では「野生生物の卵や巣を破壊してはならない」とされています。

この法律に従えば、本来オランウータンが生息する森林を開発することはできませんが、実際にはそのような森林でもアブラヤシ農園開発の対象となっており、オランウータンが農園を荒らす「害獣」として駆除されるといった事例は後を絶ちません。

下の地図はオランウータンの生息地とアブラヤシ農園の許可が与えられた地域を重ね合わせたものです。実際には約80%のオランウータンが国立公園など法律により伐採が禁止されている地域の外に生息しています。これはつまり将来的にアブラヤシ農園の影響を受ける可能性があることを意味しています。

たとえ国立公園以外の地域であっても、オランウータンが生息している森林である場合、本来であれば伐採することができないという法律があります。しかし、実際の現場では政府によるモニタリングが徹底できておらず、野生のオランウータンが生息している地域だったとしてもその存在が無視されて開発されるケースが見られます。こういった違法な状況に対して、関連するNGO、政府や警察とも連携しながら対処しています。

オランウータン救助・保護

COPでは何らかの理由により野生で生きていけないオランウータンを保護する活動も行っています。オランウータンの救助にあたっては、その地域に暮らす人々から通報してもらえるような関係を築くことで、野生のオランウータンの身に何かあった時にいつでも駆け付けることができるような体制をつくっています。

オランウータンを保護するための施設である「COP BORNEO」は、東カリマンタン州の森の奥深くにあります。ここでは地元コミュニティの若者を中心に、約20人のスタッフが24時間体制でオランウータンの世話をしています。

ここには、さまざまな理由により保護されたオランウータンが現在20頭ほど暮らしています。リハビリセンターは、あくまでオランウータンを一時的に保護するための施設であり、野生で生きていく二度目のチャンスを与えることを目的としています。

本来オランウータンは野生で生きていく為の方法を母親から学びます。リハビリセンターでは母親を失った子どもたちのために、森の中で遊びながら野生で生きていくための術を学ぶための『フォレスト・スクール』を開いています。

野生で生きていけるだけの能力が認められれば、リハビリセンターよりも自然の環境に近いプレ・リリース・アイランドに移送されます。人間から距離を置いた環境でしばらく過ごした後、人里離れた森の奥深くにリリースされます。

動物園の支援

動物園にいるオランウータンの飼育環境を改善するための支援を行っています。バリ動物園、ジャカルタのラグナン動物園、中部ジャワのセルリンマス動物園、タルジュル動物園、西スマトラのブキティンギ動物園、サワルント動物園と協働関係にあります。他にも、劣悪な環境下でオランウータンを飼育している動物園に対して、閉園を求めるキャンペーンを行いました。

密輸との闘い

野生生物取引は生き物に不必要な苦しみを与えるだけではなく、生物多様性を脅かし絶滅危惧種を危機に追い込むリスクとなります。密猟や違法取引から野生生物を守ります。

例えばオランウータンは中東やアジアの一部の地域でペットとしての需要があるため、違法に密輸される事例が後を絶ちません。

教育

子どもたちは、動物のより良い未来のための重要な役割を担っています。子どもたちとその周りにいる人々に、動物やそれを取り巻く環境、そして人間に対する前向きな取り組みを後押しするための教育活動を行っています。

年に一度、野生生物の保護に関心のある学生たちを対象に『COP SCHOOL』という集中講義を開催しています。参加者はオランウータンの窮状やそれに対するCOPの活動などについて学んだ後それぞれの生活に戻りますが、その後も何らかの形でCOPの活動に携わっており、COPの活動基盤を支える重要なネットワークを形成しています。

COPへの質問やご不明な点がある方は、こちらのフォームまでご連絡ください。