近年、健康問題の観点から油が注目を浴びています。
アメリカでは心臓疾患などの健康リスクがあるということで、油に含まれるトランス脂肪酸が規制されるというニュースは、日本でも話題を呼びました。一方で、トランス脂肪酸フリーとされるココナッツオイルが人気を集めています。
いずれにしても、トランス脂肪酸が悪者になったことをキッカケとして、油を知って選ぶ時代に入ったと言えるのではないでしょうか。
トランス脂肪酸に限らず、何の油が含まれるか分からない食品というのは、怖いものです。そしてそんな食品に限って、いかにも体に悪そうなものが多いのもまた事実です。
例えば、ポテトチップス、ファストフード、カップラーメンはそんな食品の代表ではないでしょうか?
実は、この3つの食品には共通の油が使われています。それは何だか分かりますか?
正解はパーム油です!!
何それ?
・・・と思われた方が大半だと思います。
それもそのはず、パーム油は一般にはあまり知られておらず、『見えない油』とも言われています。それは一体どういうことなのでしょう?
では、ポテトチップスやカップラーメンの原材料名を見てみましょう。
植物油脂って書いてある
植物油脂・・・なんだか非常にざっくりとしていますね。
パーム油は、ポテトチップスやカップラーメン、フライドポテトを揚げるのによく使われています。しかしパッケージには『植物油脂』としか表示されていないのです。
ここでは、私たちの身近な食品に隠れて入っているパーム油の秘密をお伝えしていきます。
そもそも植物油にはどんな種類がある?
食用の植物油としては、日本では菜種油、パーム油、大豆油が最も多く消費されています。2020年の消費量ではパーム油は2位でしたが、その割合は年々増えてきています。
名前は馴染みが薄くても、実は多くの身近なお菓子や食品に入っているのです。スーパーやコンビニに行けば、多くのパーム油を使った食品が並んでいます。日本人は一年間に平均4kgものパーム油を食べているとされています。
しかし、日本人が大量摂取のパーム油は超危険!パン、菓子、カップ麺・・・発がんや糖尿病のリスクもといった指摘もされています。
パーム油って何?
パーム油は、『アブラヤシ』の実から採れる油です。
ヤシと言えばココナッツを連想しがちで紛らわしいのですが、同じヤシの木でもココヤシとは種類が違います。アブラヤシは『ヤシの実洗剤』の原料でもあり、食用だけでなく洗剤や化粧品にも使用されています。
日本で使用されているパーム油のほとんどは、マレーシアとインドネシアから来ています。
この二国は日本人にとっては、バリ島やボルネオ島などリゾート地として有名ですが、植物油の輸入先としてはほとんど知られていません。
パーム油は便利!
パーム油がここまで沢山使われているのには、ワケがあります。
それは、『固めても溶かしても使える万能な油』だからです。
固めて固体にして、マーガリン、チョコレート、アイスクリームなどに入れると、口どけなめらかな食感になります。
溶かして液体にした場合は、ポテトチップス、カップラーメン、フライドポテトの揚げ油として使われます。
揚げ油にするメリットは、酸化しにくく、サクッと仕上がるという特徴にあります。
このような理由から、食品メーカーにとって、パーム油はとても使いやすい油なのです。
日本国内での消費量が2位なのにも関わらず一般に知られていないのは、一般家庭ではなく食品メーカーや外食産業で使用されている為だったのです。
便利で使い勝手の良いパーム油は、生産量が安定していて価格が安いということもあって、日本のみならず全世界的に消費量が増えています。
業界で人気爆発のパーム油。しかし一方で・・・
パーム油を生産するアブラヤシ農園は、熱帯の森林を切り開いて作られます。
世界中で大変な勢いでパーム油を消費している結果、森林が驚異的なスピードで消え続けています。
インドネシアとマレーシア、パプアニューギニアでは、2017〜2019年までにアブラヤシ農園のために毎年約8万6千ヘクタールの森林が失われました。これは、東京都の半分に匹敵するほどの広大な面積です。
近年では、比較的多くの原生林が残されているパプア島でも農園開発が広がっています。
パンとマーガリンが動物たちを追い出す!?
森林が消えてしまえば、そこに住む動物たちも住みかをなくしてしまいます。
ボルネオ島のオランウータンの生息数は、過去100年間で90%減少してしまいました。
スマトラ島でも同様にゾウ、オランウータン、トラなどの動物が住みかをなくしてしまいました。
ポテトチップスのために家を立ち退き!?
森林から追い出されているのは、動物たちだけではありません。
農園を作るために切り拓かれる森林では、先住民など多くの人々が森林を利用して暮らしています。
しかし、農園を広げるためにそうした人々が強制的に住む場所を追われるという事件が後を絶ちません。
インドネシアではアブラヤシ農園開発による土地紛争が550件発生しています。(2020年時点での現地NGO情報)
しかも、強制立ち退きの補償金が人々に支払われることは無く、もと暮らしていた土地に新しくできたアブラヤシ農園で過酷な労働をして暮らしを立てなければならなくなるケースが増えています。強制労働や児童労働という深刻な人権問題も起きています。
カップラーメンは火事の元??
さらに、森林を切り拓いてしまうと乾燥して、火事が起こりやすくなります。
マレーシアやインドネシアには泥炭湿地(でいたんしっち)という、倒れた木などが水中に埋まったままの湿地が多く、そこが乾いて火がつくと大火災になり、国中の空が煙で真っ白になってしまうほどです。それは「煙害」といわれ、深刻な健康被害が出ています。また、森林火災によって膨大な量の温室効果ガスが排出されるため、深刻化している地球規模の気候変動のさらに大きなリスクとしても懸念されています。
おやつに買ったチョコレート
パーム油が入っているかはナイショです
このように様々な問題を引き起こしながら、日本のスーパーやコンビニにパーム油は届きます。しかしお店に並んだ時には、それは植物油脂と表示され、私たちの目に見えない存在になってしまいます。どこにパーム油が含まれているのか、私たちには知るすべが無いのが現状なのです。
【まとめ】パーム油とは?
- ・ポテトチップスやカップラーメン、チョコレートにも入っている。
- ・安く安定的に手に入り、メーカーにとって便利。
- ・日本人は年間4kg食べている。
- ・反面、問題児。生産地では様々な問題を起こしている。
- ・表示は「植物油脂」だけなので、お店でパーム油入りの製品を見分けられない。
どうすればいいの?
では、パーム油の入っている食品は絶対に避けるべきでしょうか?
たしかに、パーム油が入っていそうな食品を食べないというのも、ひとつの選択かもしれません。しかし、どこに隠れているか分からないパーム油を果たして避けることが出来るでしょうか?
私たち消費者としてまずやるべきことは、どこに入っているか、入っていないのかを知ることではないでしょうか?
メーカーがどんな油を使っているか聞いてみよう!
聞いてみよう!
・・・とは言っても、メーカーに問い合わせるという行動を起こすのは、誰でも簡単に出来ることではないと思います。
そこで、私たち「プランテーション・ウォッチ」がみなさんを代表して、主要な食品メーカーに問い合わせをします。油の真実が知りたい!という気持ちを、ぜひ下の「知りたいボタン」を通して私たちに送ってください。
「知りたいボタン」の数が多いほど、問い合わせの効き目が強くなると信じています。よろしくお願いします!